長時間煮込まなくても、日本産和牛の香り豊かな一杯に
一日頑張って帰宅した夜は、手間のかかる料理よりも、短時間で作れて心まで満たされる温かい料理がうれしいものです。そこでおすすめしたいのが、日本産和牛を使った時短フォー。通常の牛肉フォーは牛骨や牛すじを長時間煮込み、玉ねぎ、生姜、八角、シナモンなどの香りを移してスープを作りますが、今回は市販の牛だしを土台にすることで、調理時間を約20分まで短縮します。
2人分の材料は、乾燥フォー160グラム、日本産和牛のしゃぶしゃぶ用またはすき焼き用薄切り肉160グラム、もやし100グラム、玉ねぎ4分の1個、青ねぎ1本、パクチー適量、ライムまたはレモン2分の1個を用意します。スープには水800ミリリットル、市販の牛だしまたはビーフコンソメを表示量に合わせて加え、ナンプラー大さじ1と2分の1、砂糖小さじ1、薄口しょうゆ小さじ1、塩少々を使います。
香りづけには薄切りの生姜4枚、八角1個、シナモンスティック3センチほどを加えます。八角やシナモンがない場合は五香粉をほんの少し使っても構いませんが、入れすぎると和牛の繊細な甘みを覆ってしまうため、香りがわずかに感じられる程度に抑えるのがポイントです。
和牛は脂の甘みが強いため、赤身と脂のバランスがよい肩ロースやもも肉が向いています。霜降りの多い部位を使う場合は、一人分を70グラム程度に減らしても十分な満足感が得られます。肉は可能な限り薄いものを選び、調理直前まで冷蔵庫に入れておきましょう。熱いスープを注いだ瞬間に表面へ均一に火が入り、やわらかな食感を保ちやすくなります。
鍋ひとつで仕上げる、20分の時短調理
最初にフォーを商品の表示どおりに水またはぬるま湯で戻します。短時間タイプなら、ほかの材料を準備している間に戻せるため便利です。玉ねぎはできるだけ薄く切り、辛味が気になる場合は水に5分ほどさらしてから水気を切ります。青ねぎは小口切りにし、パクチーは食べやすい長さに切ります。ライムまたはレモンはくし形に切り、和牛は大きければ食べやすい幅に整えておきます。
鍋に水、牛だし、生姜、八角、シナモンを入れて中火にかけ、沸騰したら弱めの中火で7分ほど煮ます。わずかな煮込み時間でも香りをしっかり引き出すため、八角とシナモンは鍋に入れる前に乾いた鍋で20秒ほど温めると効果的です。ただし、仕事帰りで少しでも早く食べたいときは、この工程を省略して直接スープへ入れても問題ありません。
香りが出たらナンプラー、砂糖、薄口しょうゆを加え、味を確認してから塩で整えます。フォーと和牛が入ると味が薄く感じられるため、この段階ではスープだけを飲んで少し濃いと感じる程度が目安です。香りが強くなりすぎないよう生姜、八角、シナモンを取り出し、スープを再びしっかり沸騰させます。
戻したフォーともやしをスープへ加え、商品の表示時間を目安に1分から3分ほど煮ます。フォーは加熱しすぎると切れやすくなるため、中心にわずかな弾力が残る段階で火を止めるのが理想です。麺ともやしを先に二つの器へ分け、その上に和牛を重ならないよう一枚ずつ広げ、玉ねぎをのせます。最後に沸騰直前まで温め直したスープを和牛へ直接注ぎ、30秒ほど待てば、余熱によって肉がしっとりと仕上がります。
和牛の甘みを引き立てる、仕上げと楽しみ方
仕上げに青ねぎとパクチーを散らし、ライムまたはレモンを添えれば完成です。最初の一口は何も加えず、香辛料の温かな香りと和牛の脂が溶け込んだスープを味わってみてください。その後で柑橘を搾ると、脂の濃厚さがすっきりと整い、最後まで軽やかに食べ進められます。辛味が欲しい場合は、薄切りの赤唐辛子やチリソースを少量加えると、味の輪郭がいっそうはっきりします。
より満足感を高めたいときは、和牛の半量だけをスープでさっとしゃぶしゃぶし、残りを生の状態で器に並べる方法がおすすめです。火の通り方が異なる二種類の和牛を一杯の中で楽しめるため、短時間の料理でもごほうび感が格段に増します。一方、肉の生焼けが気になる場合は、和牛をスープへ入れて30秒から1分ほど加熱し、全体の色が変わったことを確認してから盛り付けると安心です。
パクチーが苦手なら三つ葉や大葉、青ねぎを多めに使ってもおいしく仕上がります。フォーが手に入らない日は、細めの米粉麺や春雨、そうめんでも代用できます。前日の夜や朝に玉ねぎと薬味を切り、スープ用の香辛料をまとめておけば、帰宅後は鍋を火にかけるだけです。疲れた夜にも無理なく作れて、和牛の上品な甘みと熱々の香味スープに癒やされる一杯は、忙しい日の自分を労う料理にぴったりです。
先に言っておくと、私の本業は写真だ。二十年以上、香港で千を超えるレストランを撮り歩き、皿の上の一瞬の光を追いかけてきた。料理は逃げないが、美味しく見える瞬間は逃げる。だから私はいつも、まるで事件現場を調べる刑事のようにレンズを構える。犯人は光、被害者は影、そして私はその関係を暴く。
そんな私が、ちゃっかり翻訳もやっているのは単に語学が好きだからだ。写真で皿の表情を捕まえるのと同じように、言葉にも“いい角度”がある。中国語と日本語をいじって楽しむのも、結局はその延長線上だ。
このサイトに写真・デザイン・飲食だけでなく、言語の話題まで並ぶのは──まあ、そういう性分ということだ。
